メディア露出は、ブランドの価値を高めるための強力な武器になります。しかし、新商品が次々と発売される中、メディアの目をひくにはコツが必要です。この記事では、メディア露出でブランド力を上げる方法を解説しています。メディア露出に成功した人や、専門家に取材して、メディア露出を実現するための15のコツもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
メディア露出のメリット
信用の獲得
メディア、とくにマスメディアは社会的信用が高く、世間への影響力があります。メディアに取り上げられることで、社会的な信用が得られます。
認知度の向上と潜在顧客の発掘
メディアに取り上げられることで、より幅広い層に情報が届くため、世間的な認知度が高まります。それまでのアプローチではリーチできなかった新しい消費者層にもブランドを認知してもらえるようになります。
売上の増加
ポジティブな文脈で取り上げてもらえた場合、ウェブサイトや店舗への訪問、問い合わせの増加などが期待でき、結果として売上の増加につながる可能性があります。
メディアの種類
テレビ
視聴者の多いテレビへの露出は、ブランド認知を高めたり、商品の発売を話題にしたりするには、とても効果的です。2023年の調査によると、テレビを情報源として信頼している人は、全年代で61%にのぼります。
しかし、広告の場合は制作費と放映費がかかり、非常に高額です。国内のキー局に15秒のCMを1回流す放映費は75万円以上、制作費はタレントとの契約費を除いても300〜600万程度といわれています。
ラジオ
ラジオはコロナ禍以降、若い聴取者が増加しているといわれています。
広告は比較的安価で、制作にも時間がかからず、個人や自社で作成することも可能です。大きな視聴者層にリーチできますが、テレビ広告ほど費用はかかりません。番組の間に放送されるラジオ広告は通常20秒程度で、局によっては1回20,000円程度で放映できます。
紙媒体
新聞、雑誌、フリーペーパー、パンフレットなど、印刷物を媒体とするメディアです。新聞はメディアの中で最も信頼されているというデータがあります。
自動車や旅行のように長期間の販売が見込まれる商品の広告に人気があります。新聞広告、雑誌広告といった掲載広告と、折り込みチラシなどのチラシ型広告があります。インターネットやソーシャルメディアが台頭している今日においても、ニッチ市場では依然として重要な広告手段です。
オンライン
ウェブサイト、ブログ、SNSなどがオンラインメディアに該当します。広告も容易で、制作も出稿も比較的安価であり、投稿やバナー、動画など、様々な形態が可能です。特定の属性をもつ人に対するターゲティングも容易です。ただし、スキップされたり、目にとまらなかったりする可能性も高いというデメリットがあります。
メディアに取り上げられるための戦略
第三者に取り上げてもらうためには、そのための評判を獲得しなければなりません。メディアの目に留まるきっかけ作りが必要です。次の手順に沿って、メディアにブランドを売り込み、ブランド戦略を進めていきましょう。
1. ストーリーをまとめる
メディアに取材されるには、話題性が欠かせません。企業や商品の裏にドラマやストーリーがあれば、人々の関心を集めることができます。ブランド構築の経緯や、どんなことを考えて仕事に取り組んでいるか、何が新しいかなどをまとめて、ストーリーとして共有できるようにしておきましょう。
人の生き方や考え方にまつわるユニークな物語は、他の人の興味をひきます。ニュースのための単なる情報提供ではなく、話題になることや、魅力を共有することが重要です。
2. 売り込むメディアをリストアップする
売り込むべきメディアを探します。すでに似たトピックを取り上げているメディアは親和性が高く、取り上げてもらいやすいです。たとえば、地域に根ざしたビジネスを行っている場合、地域おこしの取り組みを取り上げているフリーペーパーなどを探すのがおすすめです。広報活動をしやすいように、各メディアについて、次の情報をまとめておきましょう。
- メディアの正式名称
- 所在地
- 媒体ジャンル
- 部署名、役職、担当者名
- メールアドレス
- 電話番号
- FAX番号
3. プレスリリースを書く
プレスリリースとは、メディアなどの報道機関に向けて、情報提供・告知・発表を行う文書です。プレスリリースでは、メディアが記事を書くために必要な情報をすべて提供しましょう。ブランドや商品に注目してもらいたいとき、新商品やサービスを発表するとき、新しい提携先ができたときや、新しいウェブサイトやブログを発表するときなどに、プレスリリースを発表します。プレスリリースに書くべき項目は、以下の5つです。
- 発信日・発信者
- タイトル・見出し
- リード文
- 本文
- 問い合わせ先
なるべく簡潔に、メディアやその視聴者、読者、オーディエンスの興味をひくようなプレスリリースを作成しましょう。
4. プレスリリースを発表する
リストアップしたメディアにプレスリリースを送付します。このときに添えるメールやカバーレターのメッセージも重要な要素です。
まずは、自己紹介に加えて、概要、プレスリリースを送付した経緯を述べましょう。送付先のメディアが興味を持ちそうな関連事項があれば、それも記載することをおすすめします。メディアにもそれぞれ、独自の方向性や語り口があります。メディアにあわせたトーンと切り口で、あなたのストーリーを語れるようにしておきましょう。締めくくりには、感謝の言葉と連絡先を忘れずに記載してください。
5. フォローアップ
メディアからの返信には数週間、場合によっては数ヶ月ほどかかります。ある程度の時間が経過しても返答がない場合は、フォローアップメールを送りましょう。
たとえ返信がなくても、気落ちすることはありません。メディアに取り上げられない理由はさまざまです。諦めずにアピールを続ければ、相性のいい媒体に取り上げられてもらえるかもしません。
また並行して、メディアからの問い合わせに対応する準備も整えておきましょう。質問への回答や追加情報の提供、インタビューの依頼などの問い合わせが来る場合があります。
メディアに取り上げられるための15のコツ
メディアに取り上げられ、露出を増やすためのコツを専門家に聞いてまとめました。
1. プレスキットを作成する
プレスキットとは、メディア関係者に向けて、企業や事業に関する資料・画像・動画素材などをまとめたものです。プレスキットには、企業概要、主要メンバーのプロフィール、高画質の商品画像、商品紹介動画などを含めましょう。印刷して手渡す、ウェブサイトからダウンロードできるようにしておくなどの配布手段があります。メディア関係者の要望に合わせて、ケースバイケースで準備しましょう。
「プレスキットは、ターゲットとする記者やブロガーに合わせて作成し、記事の作成に必要な情報を簡単に見つけられるようにしておきましょう」
——スミス・バートン(WREI)
2. PR TIMES(ピーアールタイムズ)などのプレスリリース配信サービスを利用する
PR TIMESや@Press(アットプレス)などのプレスリリース、ニュースリリースの配信プラットフォームを活用して、メディア露出の機会を得ましょう。メディアは配信プラットフォームから、取り上げるネタを探しています。PR TIMESの場合、登録申請をして審査に通ると、プレスリリースを配信することができます。
「配信サービス経由でカタログギフトに掲載される機会を得ることもあるでしょう。ファッション、健康・サプリメント、家庭用品などであれば、特集記事で意見を求められることもあるでしょうし、大手メディアでおすすめの品として自社製品が取り上げられる可能性もあります」
——ライアン・ターナー(Ecommerce Intelligence)
3. メディアの視聴者・読者・オーディエンスにあわせた内容で売り込む
メディアへの売り込みでは、メディアの視聴者、読者、オーディエンスの関心やニーズに焦点をあて、あなたのブランドや商品がどのように魅力的であるかを発信しましょう。メディア露出を増やすことが最終的な目的ではありますが、ブランドの良さを一方的に語るのは逆効果です。取り上げてくれるメディアにとってのメリットを考えることが、結果的に効果的なアピールになります。
「製品やサービス、企業の宣伝はあくまで副次的なものと心得ましょう。メディアにとっての読者/視聴者/聴取者に役立つアドバイスや見識、知識を提供し、結果的にメディア露出につながれば、人々の関心を集めることができます」
——リンダ・ポーファル(Strategic Communications)
4. メディア関係者に連絡する
あなたの業界のメディア関係者をリサーチしましょう。メディア露出を得るには、自ら働きかけることが不可欠です。メディアからの連絡を待たずに、適切な人物を見極めて、自分から積極的に連絡しましょう。
「例えば、食品・飲料会社であれば、その分野をカバーしている記者を探してアプローチしてください。自分の分野と完璧にマッチする記者を見つけることが重要です」
——メラニー・エドワーズ(Olipop)
5. 記者と良好な関係を築く
記者と親しくなることが、メディアに取り上げられるための一番の近道です。記者の信頼を得て、メディアとコネクションを築くことができれば、強力な武器になります。
国内ではラジオ/TVの放送局や新聞社などの大手メディアを中心に構成されている任意組織として「記者クラブ」というものが複数存在します。記者クラブによっては、プレスリリースの投げ込みが認められているところもあり、社会貢献性や地方創生、地域に根差した活動など公共性の高い内容であれば取材してもらえる可能性があります。
「ネガティブな取り上げ方をされないように、記者とは良好な関係を維持しましょう。記者の言葉はブランドに大きな影響を与えます」
——エリック・エルグレン(Andar)
6. 地元メディアにアプローチする
地元のコミュニティやイベントに関する記事を得意とするメディアは多く存在します。地元メディアを探してアプローチしましょう。うまくいけば、別の地元メディアに取り上げられるかもしれません。
「(地元のメディアが取り上げてくれたことで)初期に地元の顧客がつき、ビジネスの立ち上げの時期を支えてくれました」
——マット・アディソン(Rugged Black)
7. 時事ニュースに便乗する
リスクは伴いますが、時事ニュースについてコメントを出すのも有効です。事業に関連する時事ニュースに対し、新しい切り口や独自の見解を提示できれば、注目を集めることができます。
「会社がメディアの注目を集めれば、関連する記事に取り上げられる機会が得られます」
——サイモン・ブリスク(Click Intelligence)
8. Googleトレンドデータを活用する
Googleトレンドとあなたのブランドや商品を結びつけたストーリーを提供しましょう。例えば、太陽光パネルを販売するビジネスを行っている場合で考えてみましょう。Googleトレンドで「電気代の変動」や「気候変動」についての急上昇を確認したら、そのデータと専門家のコメントをまとめた上で、あなたのサービスがいかにその問題解決のソリューションとなるかを提示できます。
「専門家のコメントや関係者のコメントを提供して、データに関連するストーリーを構築しましょう」
——アシュリー・ウッディアット(Woodyatt Curtains)
9. アフィリエイトプログラムを活用する
アフィリエイトプログラムに参加して、ブランドについて広めてもらいましょう。多くのメディアが商品を特集する際に、このプログラムを必要とする方向にシフトしています。
「露出が増えるだけではなく、大手の報道機関に取り上げてもらう際にも役立ちます」
——ブルック・キラフィ, Qilafi Public Relations
10. 人気ブロガーとタッグを組む
ブログで取り上げてもらうことで、ブロガーのファンコミュニティを、ブランドに誘導することができます。先に挙げたアフィリエイトと組み合わせることも可能です。
「Googleの検索順位が高いコンテンツを持つブロガーに注目しましょう。紹介してもらえれば、(ショップの)クリック数が増え、信頼が得られる可能性があります」
——エミリー・ワデル(Give a Damn Goods創設者)
11. インフルエンサーとタッグを組む
インフルエンサーと提携し、認知度を高めましょう。インフルエンサー経由で露出を増やすことで、信頼性も高まり、メディアに取り上げてもらえる可能性が高まります。
「SNSで積極的に活動すれば認知度は飛躍的に向上し、『注目のブランド』として地位を確立することができます」
——エリック・エルグレン(Andar)
12. インフルエンサーにサンプルを送る
Instagram(インスタグラム)、YouTube(ユーチューブ)、TikTok(ティックトック)のインフルエンサーをピックアップして、商品のサンプルを送りましょう。インフルエンサーが動画で取り上げてくれる可能性があります。
「以前、Shopify(ショッピファイ)でドロップシッピングをしていたとき、フォロワー数が5,000人未満のマイクロインフルエンサーと連絡をとりました。製品のサンプルを送り、少額の謝礼を支払い、取り上げてもらったことで売上につながりました。時間とお金をかけるだけの価値があったと考えています」
——ベッキー・ビーチ(Mom Beach)
13. 社会的な目的をアピールする
社会問題の解決などのビジョンは、人々に好意的に受け入れられる可能性が高いです。目的に即したストーリーは広めやすいものです。商品そのものに、企業のミッションを関連付けて、社会貢献や地域活動をアピールしましょう。
「(社会的目的を推進していることについて)プレスリリースを発信しましょう。紹介動画を添付し、メディアに送付するのも効果的です」
——ケビン・タッシュ(Tack Media)
14. PRの専門家に依頼する
PR活動には多大な時間と労力が必要です。メディアに好意的に取り上げてもらうには、必然的に時間がかかりますが、PR会社に依頼して代行してもらうこともできます。
「PRのプロは、すでにメディアとコネクションを持っています。また、マーケティング企業を雇い、報道機関に取材してもらうのもひとつの手です」
——リギア・ルゴ(The Daring Kitchen)
15. 賞に応募する
メディアでの露出を得るために、何らかの賞に応募するのもいいでしょう。政府や自治体、企業などが、毎年さまざまな賞を開催しています。たとえば、プロダクトデザインなら公益財団法人日本デザイン振興が開催しているグッドデザイン賞が有名です。
「賞を受賞できれば、主要なメディアから認知されるだけでなく、業界内で競争力のある存在としても際立つことができます」
——クリスティ・ピルツ(Paradigm Peptides)
まとめ
メディア露出を得ることができれば、事業の認知度と価値を高めることができます。適切な媒体を見極め、メディア関係者に積極的に働きかけて、ブランドのストーリーを広めていきましょう。
メディア露出についてのよくある質問
メディア露出の種類とは?
- 第三者による自然発生的なメディア露出:ポジティブな口コミや、SNSへの投稿といったUGC(ユーザー生成コンテンツ)、雑誌やウェブサイトへの掲載など、第三者によって取り上げてもらえる場合があります。
- 有償のメディア露出:新しい企業や製品が、最初の注目を集めるために、対価を支払ってメディアに取り上げてもらう場合もあります。広告も、有償のメディア露出の一種です。
- オウンドメディアへの露出:自社のウェブサイト、ブログ、SNSアカウント、パンフレットや広報誌など、自分の所有するメディアで発信するのも、メディア露出に該当します。
メディア露出のメリットとは?
メディア露出のメリットには、認知度の向上、検索順位の上昇、それに伴う問い合わせや売上の増加などがあります。
メディア露出を得るには?
記者などのメディア関係者と直接連絡を取り、ストーリーのアイデアを提案したり、プレスリリースを提出したりすることができます。また、PR会社に依頼することも可能です。
文:Taeko Adachi