商品企画やマーケティングでは、さまざまな場面においてユーザー視点を持つことが求められます。そこで欠かせないのがペルソナ設定です。集客に苦戦しているときや販売実績が上がらないときにも、「ペルソナは誰か」を振り返ることで解決策への糸口が見つかることがあります。
この記事では、ペルソナ設定のメリットや方法について、テンプレートや具体例とともに詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
ペルソナとは
ペルソナとは、自社商品やサービスの典型的なユーザー像です。この架空のユーザーはどのような人物かを細かく設定することを「ペルソナ設定」と言います。
ペルソナ設定では、年齢、性別、居住地などの基本情報だけではなく、性格や価値観といった心理的な情報、さらに休日の過ごし方などの行動情報まで具体的に描きます。
ネガティブペルソナ
ネガティブペルソナとは、企業がターゲットにしない、または積極的に避けるべきユーザー層のことを指します。例えば、強引な値引きを要求する顧客、頻繁にクレームを入れる顧客、支払いに問題のある顧客、返品・交換を繰り返す顧客など、自社のビジネスにとって利益が少ない、または不利益をもたらす人が該当します。
ネガティブペルソナを事前に明確にしておくことで、本来注力すべき見込み客層へのアプローチに集中することができます。
なぜペルソナが必要なのか
ユーザーについて深い洞察を与えてくれるペルソナは、マーケティングの効果を高めるために必要です。「30代の女性会社員」「都内在住の40代男性」のような単純なターゲティングでは、その人の社会的立場や家族構成などによってライフスタイルや価値観はさまざまなため、手がかりが少なすぎて漠然としたマーケティング戦略になってしまう可能性があります。しかし、ペルソナを念入りに作り込めば、「こういう生活をしているから、こんな商品を必要としている」「こういう価値観を持っているから、こんな伝え方が効果的だ」という具体的な戦略を考えることができるようになります。
ユーザーのライフスタイルや価値観に寄り添った商品やサービスが求められている今、ペルソナを設定しどれだけユーザーの本質を理解できるかが、競合他社に差をつけるために重要なのです。
ペルソナを設定するメリット
ユーザーのニーズを把握しやすくなる
ユーザー像を実際に存在しそうな人物として描くことで、その人のライフスタイルはどのようなもので、その人は何を大切にしているのか、どのようなことに悩んでいるのかを想像しやすくなります。それにより、どんな商品やサービスが求められているのか把握しやすくなり、製品開発やマーケティング時の指針が得られます。
効果的な広告に絞り込める
ペルソナには、居住地や勤務地だけでなく、休日によく行く場所、日頃使用しているメディア、そのメディアで何を見ているのかなどの要素も含むので、広告の最適な掲載先やタイミングが見えてきます。そのため、限られた広告費の中で、効果的な集客方法に絞り込むことができます。
マーケティング戦略を最適化できる
性別や年齢はもちろん、趣味、価値観、将来の夢などの情報も含まれるペルソナを活用すれば、ユーザー視点に立ったマーケティング戦略を構築することができます。ペルソナをもとにして、サイトデザインや広告のコピー、ブログ記事のテーマなどを考えれば、ユーザーの心により刺さるメッセージを伝えることができます。
チーム内で認識を共有できる
ターゲットの定義が曖昧で担当者がそれぞれ異なるユーザー像を思い描いていると、企画や戦略に一貫性がなくなってしまいますが、事前にペルソナを設定しておけば、全員が共通の認識を持ち目標に向けて効率良く作業することができます。さらに、ペルソナがあることで、データを見るだけのときよりも具体的なアイデアが出やすくなります。
ペルソナの設定方法
ここでは、ネットショップで販売する新商品の企画を例に、ペルソナの設定方法を手順を追って解説します。
ステップ1:情報を収集する
まず、顧客に関する情報を集めます。情報収集にはさまざまな方法があるので、複数の方法を組み合わせながら多角的な視点から情報を集めるとよいでしょう。情報収集の方法には以下のようなものがあります。
- アクセス解析:ネットショップのアクセス解析を行い、顧客がサイトを訪問するきっかけとなったキーワードやアクセスしたページ、購入品、カゴ落ちの有無などを調べましょう。Googleアナリティクス以外にも、Shopifyでネットショップを開設した場合はShopifyストア分析機能を利用してユーザーのサイト内での動きを簡単に把握できます。
- アンケート・インタビュー:類似商品を購入した人を対象に、なぜその商品を購入したか、購入後にどのような効果や不満を感じているかなどをヒアリングします。顧客データから、作成しようとするペルソナに近いユーザー層を選び、アンケートを実施しましょう。特にインタビューではユーザーの生の声を聞くことができるので、ライフスタイルや価値観、悩みなどについても深掘りすることができます。よりリアルなペルソナを設定するために、おすすめの方法です。
- ソーシャルリスニング:アンケートやインタビューで引き出すことが難しい顧客の本音を探るには、ソーシャルリスニングという方法があります。SNSへの書き込みを収集・分析して既存顧客や見込み顧客の潜在的な要求を把握しましょう。
ステップ2:集めた情報を仕分ける
次に、集めたデータを「悩み」「価値観」「ライフスタイル」「購入の動機」などの切り口で似た傾向のグループにわけ、整理します。このように情報を分類することで、多数の顧客に共通する特性が見えてきます。
ステップ3:ペルソナの形に仕上げる
顧客の特性が見えてきたら、ペルソナの形にまとめていきます。集めたデータを、基本情報、心理的な情報、行動情報をベースに仕分けし、パーソナリティ、ライフスタイル、自社の商品・サービスとの関わり方を具体的に描きましょう。浮かび上がったユーザー像に写真を加えると、ペルソナはより人間味のある、身近な存在となります。
ステップ4:ストーリーとしてまとめる
さらにもう一歩踏み込み、項目別に書かれた要素をつなぎ合わせて、ひとつのストーリーにまとめます。顧客がどこで商品を知り、どのような場合に興味を持つのか、どのように購入を検討し決断するのかというカスタマージャーニーを意識しながら、集めた情報をまとめましょう。ストーリーにまとめることでより顧客の視点に立って考えられるようになり、マーケティングのさまざまな局面で行き詰ったときもヒントを見つけやすくなります。
ペルソナを構成する要素
ペルソナ設定では、その人物があたかも実在するようにユーザー像の人となりを設定することが重要です。ペルソナ設定で重要な要素として、主に以下の3点が挙げられます。
1. 基本情報
- 名前
- 性別
- 年齢
- 居住地
- 勤務地
- 学歴
- 職業
- 収入
- 家族構成
2. 心理的な情報
- 趣味
- 価値観
- 悩み
- 将来の夢
- チャレンジしていること
3. 行動情報
- よく行く場所
- よく見るメディア
- 使用SNS
- 使用デバイス
- 平日の過ごし方
- 休日の過ごし方
以上がペルソナ設定での基本項目ですが、商品やサービスの特性によって項目を増やしてもよいでしょう。例えば海外や別の都市に初出店する場合は、その地域の天候や文化、人口密度などの地理情報を付け加え、新規参入する土地の商習慣などの特徴を把握しておきましょう。また、ネットショップ利用者のペルソナを設定する場合、アクセス解析をして以下のような項目を追加すると、ペルソナはさらに有益なものとなります。
- サイト訪問の際に検索したキーワード
- アクセスしたページ
- 購入商品
- 購入しなかった商品
ペルソナ設定に使えるテンプレート
ペルソナ設定にテンプレートを使用することで、作成する時間を節約することができ、必要な情報を網羅することができます。以下のテンプレートシートに自分のビジネスに合った項目を加えてペルソナを設定してみましょう。
名前:
性別:
年齢:
居住地:
勤務地:
学歴:
職業:
収入:
家族構成:
趣味:
価値観:
悩み:
将来の夢:
チャレンジしていること:
よく行く場所:
よく見るメディア:
使用SNS:
使用デバイス:
平日の過ごし方:
休日の過ごし方:
サイト訪問の際に検索したキーワード:
アクセスしたページ:
購入商品:
購入しなかった商品:
ペルソナ設定の具体例
では例として、キッチン用品のネットショップのためにペルソナ設定をしてみましょう。収集した情報をテンプレートに入れて、具体的な人物像に落とし込んでいきます。
- 名前:林田 愛
- 性別:女性
- 年齢:32歳
- 居住地:東京都江戸川区
- 勤務地:東京都千代田区
- 学歴:大学卒
- 職業:会社員(ウェブディレクター)
- 収入:530万円
- 家族構成:夫と二人暮らし
- 趣味:ヨガ、料理
- 価値観:外食よりも自炊した方が経済的かつ健康的だと感じている。
- 悩み:健康的な食生活のために一汁三菜を実現したいが、仕事も忙しくあまりできずにいる。キッチン収納が煩雑になりがちなので、機能的な収納用品を探している。
- 将来の夢:将来は子供がほしい。貯金をするため、節約を心がけている。添加物が含まれる食品は極力避け、健康的な体を維持したい。
- チャレンジしていること:休日に作り置きしている。そのままテーブルにも出せるおしゃれで、かつ洗いやすい保存容器を集めている。同じ食材で作れるレパートリーを増やしたいので、レシピを食材名で検索している。
- よく行く場所:近所のカフェ(在宅勤務の日の息抜き)、JA農産物直売所(休日にまとめ買い)
- よく使うメディア:料理系メディア(クラシル、macaroni)、料理研究家のYouTubeとインスタグラム、ヨガインストラクターのYouTubeとインスタグラム、
- 使用SNS:インスタグラム、YouTube、LINEニュース
- 使用デバイス:Macbook、iPhone
- 平日の過ごし方:9:00~18:00は仕事。週3在宅勤務。夜入浴後、ヨガを30分ほどする。在宅の日は自炊をしたり、作り置きを食べたりしている。
- 休日の過ごし方:夫や友人と外出。ハイキングなど体を動かすことをする。食材の買い出しに行き、作り置きをする。
- サイト訪問の際に検索したキーワード:おしゃれ、保存容器
- アクセスしたページ:保存容器カテゴリー
- 購入商品:インスタキャンペーン中のガラス製保存容器セット
- 購入しなかった商品:プラスティック容器
このように具体的な人物像があった方が、「30代 既婚 女性」という単純な括りよりもユーザーへのアプローチが考えやすくなったのではないでしょうか。
ここでさらに、項目に分けて書かれている人物像を包括的にとらえ、ストーリーにしてみましょう。
ストーリー
夫と二人暮らし。収入は十分ではあるが、将来子供がほしいので、貯金と健康的な生活を心がけている。趣味の料理をすることで、節約と健康維持の両方が叶えられるので、できるだけ自炊するよう頑張っている。ただし仕事が忙しく、時間のやりくりが難しい。最近、ガラス製の保存容器セットを買い、これが料理器具と保存容器と食器の3役をしてくれるので、時短になっている。休日にはJA農産物直売所に行き、キズはあるが新鮮な野菜を安く大量に購入する。同じ食材で多様な料理を作れるよう勉強中。そのために調味料などが増えるので、キッチンが煩雑になっている。最近はキッチンの収納術や収納用品をネットで検索している。
このようにストーリーにすることにより、具体性が増し、ユーザーは何を考えて行動し、どのように購入にいたるのかを想定しやすくなります。
ペルソナ設定のポイント
データに基づいて作成する
ペルソナを設定する際に最も避けるべきことは、ユーザー像を想像や理想だけで作り上げることです。ペルソナは架空の人物ではありますが、実在するユーザーのデータに基づいて作成するからこそ、商品企画やマーケティングに有益なものになります。情報収集の段階でどれほど綿密な調査ができるかがペルソナの完成度を左右するため、事前の調査には時間をかけて取り組みましょう。
パターンを作りすぎない
ペルソナをいくつも作ってしまうと具体的なユーザー像を描くという本来の目的からずれてしまいます。多様なユーザーを1種類の人物にまとめるとそこに当てはまらないパターンも出てくるため、複数のペルソナを設定しパターンごとに戦略を考える場合もありますが、多くても2~3人にするとよいでしょう。
カスタマージャーニーを意識する
集めたデータを闇雲に切り貼りするのではなく、ユーザーはどこで商品を知り、何を考えて行動し、どのように購入に至るのかというカスタマージャーニーを意識しながら情報を組み立てるようにしましょう。
定期的に見直す
ペルソナは一度作ったら終わりではありません。市場を取り巻く環境が変化するなか、ユーザーのニーズや価値観は日々変わっていくものです。また、一人のユーザーの視点からは見えなかった別のユーザーの視点から気づきを得ることもあります。環境やトレンド、ユーザーのニーズの変化を注視しながら、設定したペルソナが実際のユーザー像を反映しているかどうかを定期的に見直しましょう。
まとめ
ペルソナを設定する一番の目的は、ユーザーの視点に立つことです。商品企画やマーケティングに携わる人の間で、ペルソナ設定の考え方は広く知られるようになってきましたが、ユーザーの実態を把握しないままペルソナを作ってしまうケースもなかには見受けられます。
自社のECサイトを運営している場合、ネットショップはユーザー情報の宝庫です。蓄積された顧客データをそのままにせず、ユーザーのニーズは何か、そのニーズに応えるためにはどんな商品やサービスを提供したらよいかを考えるきっかけとして、ぜひペルソナ設定に取り組んでみてください。
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よくある質問
ペルソナ設定とは?
ある商品やサービスを提供するにあたり、その典型的なユーザーはどのような人物かを詳細に設定することをペルソナ設定と言います。
ペルソナとターゲットは違う?
ペルソナとターゲットは異なります。ペルソナはライフスタイルや価値観に重点を置いて描いた個人像であるのに対し、ターゲットは、性別や年代、職業などの条件で分類して設定したユーザー層のことを言います。
ペルソナを設定するメリットは?
ペルソナを設定する主なメリットは、ユーザーのニーズを把握しやすくなること、広告を効果のあるものに絞り込めること、マーケティング戦略を最適化できること、そしてチーム内で認識を共有できることです。
ペルソナ設定の項目には何がある?
ペルソナ設定の項目には、年齢、性別、職業などのデモグラフィック属性(統計学的属性)と呼ばれる基本情報、価値観、悩み、将来の夢などのサイコグラフィック属性(心理学的属性)と呼ばれる心理的な情報、休日の過ごし方、よく見るメディア、使用SNSなどのビヘイビアル属性(行動学的属性)と呼ばれる行動情報に関する項目があります。
ペルソナ設定のコツは?
データに基づいて作成することが重要です。他にもカスタマージャーニーを意識するという点も大事です。
文:Kyoko